昨年末に「フリーランスSEとインボイス」という記事を書きましたが、簡易課税についての話が全く抜けていた。というより簡易課税のことを殆ど知らずインボイスとの関係があることにも気が付かなかったので、税務署に聞いた話をまとめたいと思います。
前回の記事はこちら
簡易課税は「みなし仕入れ」という概念を適用できる
前回の記事で特にIT系のフリーランスは経費が殆ど掛からないので、仕入額控除できる消費税も少なくインボイスの影響が大きいと書きました。
これは原則課税のお話でした。
簡易課税は違います。
簡易課税は事業区分によって、「課税売上に対して何割分を課税仕入れとして認めますよ」という制度です。
※事業区分についてはこちら
No.6505 簡易課税制度
つまり、1つ1つの経費に対して消費税がいくらで・・・ということをやらずに簡便に計算して納税消費税額を算出するというやり方ですね。
ちなみにITフリーランスの場合、「消去法的におそらく第5種事業でしょう」と言われました。
具体例を出すと、「80万円が報酬で内税が72,727円だとしたら72,727円が消費税」ですが、第5種事業のみなし仕入れ率は50%なので、72,727円×0.5=36,363円が納めるべき消費税額となります。
(※実際の計算は国税と地方税をそれぞれ分けて算出するようですが、総支払額の結果は同じになるはずです。)
ということで、経費で支払った消費税(仕入額控除)が少なければ少ないほど、こちらの方が納める消費税額が少なくなるので節税になります。
この例の場合、仕入額控除が36,363円未満なら簡易課税の方が節税になります。
複数の事業を営んでいる場合
「事業区分の異なる複数の事業がある場合はどう計算するんですか?」と聞いてみたところ、「それぞれの事業区分ごとに計算して算出しますね。」と言われました。
つまり、第4種事業なら第4種事業の消費税額×0.6、第5種事業なら第5種事業の消費税額×0.5して合計した金額を納税する。となります。
ただ、No.6505 簡易課税制度のページには、「2種類以上の事業を営む事業者で…」で説明している箇所があり、そこには特例の計算方法があるようなので、該当する方は別途確認した方が良いでしょう。
適格請求書発行事業者の登録について
インボイスについて、まだ分からないことがあったのでインボイス相談窓口で聞いた内容を残します。
質問1
Q.令和5年3月末までに適格請求書発行事業者の登録申請手続をしなかった場合で、その後やっぱり登録したいとなったら、いつでも課税事業者になれるんですか?
A.やむ得ない場合で申請してなかった場合、4月以降でも登録申請することで10月から課税事業者になれます。
Q.やむ得ない場合なら?ということは、単に検討中で延ばしてだけなら無理ってことですか?
A.まぁ…そうですね。
(なんか出来そうだな。だって国からしたら課税事業者になってほしいもんね。知らんけど)
質問2
Q.では、インボイス制度が始まってから、やっぱり課税事業者になりたいです。となった場合、いつから課税事業者になれるんですか?
A.大体手続きに1ヶ月程度かかるので、申請してから1ヶ月程度で課税事業者になります。
質問3
Q.逆にやっぱり免税事業者に戻りたいです。となった場合は戻れるんですか?
A.戻れます。ただし手続きをした次の課税期間(翌年)からが免税事業者期間となります。手続きには1ヶ月程度かかるので、余裕を見た方がいいです。
Q.つまり、遅くても11月末までには申請しておかないと、翌年も課税事業者ということ?
A.はい。手続きが年内で間に合わなければ翌々年からが免税事業者です。
Q.課税事業者へは1ヶ月で変更できるのに、免税事業者には翌年になるまで戻れないんですね。
A.そう…ですね。
措置期間について
インボイスは措置期間が設定されています。
国や自治体の制度が変わる時によく使われる考えなのですが、いきなり一気に変えずに徐々に徐々に変えていこうというものです。
措置期間については以下のpdfが分かりやすかったです。
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/invoice/invoice15b.pdf
ポイントは、「最初の3年は免税事業者からの仕入れも8割控除できる」という点かなと思います。
仕入れ企業側の考え方なので僕には想像の域を超えませんが、8割控除できるなら発注という観点で免税事業者がそこまで不利にはならないのでは?という気がします。
気がするだけですが。
まとめ
・納税額もITフリーランスの場合、原則課税に比べればかなり減ると思われる(それでも負担増は中々だが)
・課税事業者には簡単になれるが、免税事業者にはすぐ戻れない
・措置期間があり、最初3年はまだ仕入れ業者も8割控除できるので、そこまで焦らなくても良いかも知れない
※なお、簡易課税制度を利用するためには、別途「消費税簡易課税制度選択届出手続」(長い)というのをしなければいけないので、そこも注意する必要があります。
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