フリーランスSEと小規模企業共済

中小機構が運営している小規模企業共済制度というものをご存知でしょうか?

名称の通り、小規模な企業や自営業者が加入できる共済制度で、簡単に言うと月々掛金を積立てることで、そのお金を退職金や年金のように受け取ることができる制度です。
フリーランスも加入できます。

そして重要な点として個人事業主ができる大きな節税制度でもあります。

メリット

最大のメリットは掛けているお金を全額所得から控除できるところです。
例えば、掛金は最大で7万円/月のため、最大で84万円/年が控除できることになります。

僕の他のブログ記事でも何回か言及していますが、フリーランスSEは経費が殆どかからないんですよね。
これは事業リスクという面では良いのですが、税金という面では不利なところでもあります。

もし最大の7万円を掛けていれば、青色申告所得控除の65万+84万で計149万を収入から控除できます。
仮に経費が0でもこれです。これは中々大きくないですか?

繰り返しになりますが、経費が殆どかからないフリーランスSEにおいて、小規模企業共済は真っ先に検討するべき制度だと思います。

小規模企業共済

デメリット

元本割れする場合がある?

今でも目にする話として、「掛けている期間が20年未満だと損するんだよね?」という話があります。
これは半分本当で半分嘘です。というより正確ではありません。

制度を脱退する際に掛けていたお金が返ってくるわけですが、そのお金のことを共済金、準共済金、解約手当金と呼びます。

この内、元本割れする可能性があるのは解約手当金です。

共済金と準共済金の場合は、掛けている期間が20年未満でも元本割れしません。

では、解約手当金で受け取るのはどういった場合なのかというと、

  • 個人事業を廃業しないが解約した場合
  • 掛金を12か月以上滞納した場合
  • 法人になったけど加入資格は無くならなかった。でも解約した場合

の3パターンがあります。

つまり、任意で解約するか掛金を滞納した場合を除いて解約手当金にはならないんですね。

例えば「個人事業を廃業して会社員に戻ります。」と言った場合は、共済金になるため元本割れすることはありません。

フリーランスSEだと会社員に戻るケースも多いと思いますが、掛けている期間を心配する必要はないということですね。(※ただし掛けた期間が6か月未満の場合は戻ってこないので注意!

詳しくは以下の中小機構サイトを見てください。
共済金(解約手当金)について

自由に引き出せない

積み立てたお金は自由に引き出せません。あくまで退職金という位置付けだからです。

どうしても引き出したい場合は任意解約するしかないですが、上述の通り元本割れする可能性が高いのでオススメしません。

突発的にどうしてもお金が必要になった場合、加入者は掛金合計額に応じて低金利で貸付を受けることも可能なので、そちらを利用するのも有りです。

投資という視点だと効率は良くはない

共済金の場合、掛けた金額の合計よりも多少多くのお金が返ってきますが、人によってはそこにお金をかけるくらいなら、株や投資信託で運用した方が良いのでは?と思う人もいるでしょう。

それはその人の考え方次第なので、それが正しいとか間違っているとかはありません。
実際、僕も投資効率として考えると割が良いとまでは思いません。

多少多めに返ってくる掛金の合計と毎年節税で減る金額を見て、よく検討してみてください。
ただ投資と違い、基本的に元本割れしないので手堅さはあります。

 

いくら掛けるべき?

最大で月7万円掛けることができますが、では一体いくら掛ければ良いのでしょうか?

極論を言ってしまえば、「あなたのお財布事情で決めてください」なんですが、1つだけ目安があります。

それは退職所得控除です。

共済金は大きく2種類の受け取り方があります。

  • 一括受取り
  • 分割受取り(ただし60歳以上であること)

です。併用することもできます。

一括で受け取る場合は退職所得、分割で受け取る場合は雑所得扱いになり、それぞれ税金がかかりますが、一括受取りで退職所得の場合を考えます。

退職所得は、(受取り共済金 – 退職所得控除) × 1/2の計算式で算出します。
また退職所得控除は

勤続年数20年以下 40万 × 勤続年数(ただし最低80万)
勤続年数20年超 800万 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

と計算します。
※ちなみにここで言う勤続年数とは、小規模企業共済に加入してから脱退するまでの期間です。

 

例)5万円を5年間(60ヶ月)掛けた場合

  • 受取り共済金:5万×60ヶ月=300万円(実際もう少し多く受け取れるがひとまず無視)
  • 退職所得控除:40万×5年=200万

となるので、
課税される退職所得は(300万-200万)× 1/2 で50万円です。

そしてここ(退職所得の源泉徴収税額の速算表)によると、退職所得が50万の場合は約2.5万円が納税する金額になります。

要するに一括で受け取ることを考えるのであれば、課税退職所得額が限りなく0に近い方が受け取り時の節税効果が高いということになります。

では、20年以下の場合はいくらが妥当でしょうか?

イメージできるようにわざわざ具体例で計算しましたが、結局のところ年間で40万ずつしか控除金額が増えないわけですから、年間の掛金合計額が40万までなら一括受け取り時も税金がかからないということになります。
なので、40万÷12ヶ月=3.3万円/月ということになります。

※くどいようですが、実際の受け取り金額は少し多めに返ってくるので、ギリギリで設定すると多少の納税義務は発生するかも知れません。また毎年の掛金に対する節税額も所得によって変動するので、一概にこの額がトータルで最も節税になるとは言えません。
あくまで目安としてこの掛金なら退職所得の税金がかかりませんよという意味です。

どのくらい節税になり、共済金が受け取れるかは中小機構にシミュレーションサイトが用意してあるので使ってみてください。
小規模企業共済制度加入シミュレーション

また、僕の作成した簡易所得税計算サイトでも、所得と各種控除額を入力して実際の納税金額を計算出来るようになっているので、良かったら活用してください。
簡易所得税計算

 

まとめ

ポイント
・経費があまりかからないフリーランスSEの場合、小規模企業共済制度は節税としてとても有効
・元本割れする可能性はあるにはあるが条件が限定的
・基本的に退職金なので自由に引き出す事は出来ない
・受け取り時も税金がかかる点には注意

参考になれば。

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ABOUTこの記事をかいた人

子どもが産まれたことをきっかけに働き方を見直し、フリーランスSEになった30代の父親。 埼玉県某市在住。 妻と娘(5歳)とペット(フェレット)で、日々悩みながらも楽しく過ごしています。